日韓交流熱戦譜
日韓交流熱戦譜(黒6目コミ出し)
解説 坂口 隆三 九段
(白)金 要漢(ソウル大)
(黒)大東邦雄(大工大)
101手以下略 黒半目勝 記)吉田周一
【第1譜】(1~61)
大東さんは津山市在住。訪韓は前回の釜山大会に続き2回目で、前回は2連勝。アジア各国での勤務経験もあり、話題豊富な方。岡山県や大阪府の大会で上位に入賞され、大阪での集まりにもよく参加される。
黒17では、17-十三に打ち込み、ワタリ止めに16-十からの定型を選ぶのもあった。実利も大きく、右上隅も固まる。黒33に対して白は55の点にノビる反発も十分成立しただろう。
白40は好点。対する黒41は、17-十三打ち込みから16-十の定型を選びたかった。背中も厚くなり、上辺白の勢力拡張も阻める。黒は61まで隅を後手で固める間に、白は50の好点にも先行できて、打ちやすい局面となっている。白52では53から戦うこともできたが、安全を期したのだろう。
【第2譜】(62~100 以下略)
白62が狭く、左辺4-十三あたりを利かしてから、もう少し広く挟むべきだった。黒63が先手で打てたのは幸便で、白64まではキカサレ。
黒65に対する白66は好手。黒67から69はツラいもののやむを得ないかもしれないが、白70は普通に12-十七にツメるのが大きい。黒73から中央の白を削減したのに対し、白86がユルミ(82の一路下も利くところ)で、11-十にカケツぐべきと坂口九段。それなら白優勢有利だっただろう
また黒89の頑張りに対しても、白90では91にハネダシ、黒キリに白16-八で戦えたようだ。黒95が打てては難しい形勢に。黒99では7-五に打つのもあっただろう。以下、黒が厳しいヨセ勝負を制して半目勝ちとなった。
大東さんが白の緩みに乗じて逆転勝ちした一局。本局は2局目で、1勝1敗の打ち分けを確保した。アウェイで2局目を勝つのは体力的にも厳しく、私などは勝てた覚えがない。。。本局を丁寧に検討しておられたが、気持ちの強さと、勝ちへの道を逆算し、相手の心理も読んで局面を打開する試合巧者ぶりが卓抜しておられた気がする。韓国選手には試合巧者が多いので、今後も是非参加し続けていただきたい。
(白)高 相明(済州大)
(黒)野口正樹(立命館大)
201手以下略 黒半目勝 記)吉田周一
【第1譜】(1~100)
野口さんは関東在住の若手?OB。訪韓は大東さんと同じく、釜山大会での連勝に続き2回目。韓国語を熱心に勉強していて、今後も積極的に参加し、通訳もやっていただけると有難い。今回は1局目に惜しい碁を半目負けした後、韓国側の有力選手の1人である若手強豪との対戦となった。
白が下辺で仕掛けたが、黒19は22にコスムのも冷静。白22~白26が好形だが、白28では穴が不気味。12-十八でサバキだったろう。但し黒29も打ち過ぎで、8-十五に守るのが相場。白36では単に40に押さえ、黒ヒキに3-十三で頑張れたようだ。更に白48では49にデルべきで、黒49から53で形ができ、黒55も厳しい。ただ黒59では60にコスむのがよく、白は14-十四から活きるが中央黒が鉄壁となっていた。
実戦は白がコウ含みでサバき右上の戦いへ。白78では79がよく、黒85は86に止めるのが厚く白86は機敏。ただ黒も91の好点に回った。
【第2譜】(101~200 以下略)
黒1と3はとも好点で、白を絡み攻めできそうで黒優勢。7では16にオサエて戦えた。白は16まで一息つき、18~20と細部が巧み。黒21では3-八が勝るが、白22からコウの難戦が始まった。黒もひるまず対応する中、黒33に34が問題で、45と打てば活きていた。(黒33も45が急所)
白は右下をサバき、右上に寄りつきながら56にも仕掛ける獅子奮迅の戦い。黒63は64が形。黒81は5-八で先手だった(黒5-十九で白死)。白は82と勝負手を続けるが、黒87は12-三にキリから87アテ、白ヌキに89とカケツギがよく、無条件で活きて勝負も決まっていただろう。黒は損を覚悟で93から目を奪い、コウ替わりで右上を活きて、細かい勝負となった。最後は黒がわずかに残りそうと坂口九段。
黒優勢の時間が長かったが、さすが白の粘りも巧みで、コウ絡みの終始難しい碁だった。途中から双方秒読みとなったが、難しい局面でひるまず戦い抜いた野口さんの実力に改めて感心したところ。日韓戦、そして各種アマ棋戦で活躍し続けていただきたい。